Wpis: ポピイとピリ&#
ポピイとピリイとは、あるお屋敷の車庫の中で長い間一しょに暮して来た、もう中古の自動車です。二人は、それぞれ御主人と奥さまとを乗せて、ちょうど、御主人夫婦と同じように、仲よく、りっぱに暮してまいりました。親切な、やさしい御主人にガソリンだの油だのを十分にいただき、行き届いた手入れをしていただき、何の不自由もありませんでした。 しかし、一日中、賑やかな街を駈け歩いてから、ガランとした車庫にはいると、二人は、どうも淋しくってたまりませんでした。二人は、それを自分たちに子供がないからだと思いました。 「男の子が一人あったらなア。」とポピイは言い言いしました。「そうすれば、自分の名前をついでもらうことも出来るのだが……。」 「あたしは、女の子が欲しいわ。どんなに可愛いでしょうね。それに女の子だったら、きっと車庫の中もきれいにお掃除してくれるわ。」ピリイは言うのでした。 しかし、男の子も女の子も、なかなか来てはくれませんでした。二人は、コンクリイトの床を歩きまわる小さなタイヤの音や、夜中に、自分たちのそばで可愛らしいラッパのいびきをかいている小さな自動車のことを考えると、居心地のいい車庫にはいてもちっとも、しあわせだとは思えないのでした。 家庭の匂い